TOPICS ARCHIVE
2024年
【夏のARTS】
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「三の丸尚蔵館の伊藤若冲展」
明治時代以降、皇室には長く保護されることを願って美術工芸品の献上が行われていた。皇居三の丸尚蔵間の開館記念展の第四期(最終)は、若冲の「唐獅子図屏風」や「動植綵絵」などの献上品を中心として、絵画、書跡、工芸品から選りすぐりの名品が展示されている。オンラインによる日時指定の申し込み要。70歳以上は入場無料。6月23日まで。
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三鷹で「太宰文学と美術のまじわり」
三鷹市が所蔵する太宰治の油絵全作品を公開。「筆は小説のみならず」といった太宰が描いた、静物画、肖像画など。一枚に時間を費やすのではなく、眼前の造形を瞬時に捉える手法が特徴で、特に晩年に制作した肖像画は、心を許す仲間との交流中に即席で描いている。三鷹市美術ギャラリーの「太宰治展示室」で。8月18日まで。
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【夏のCAFÉ】
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「銀座ウエスト青山ガーデン」
乃木坂駅徒歩3分、青山墓地の向かいのおしゃれな3階建てのカフェ。入ってすぐは菓子の販売コーナーで人気のリーフパイやケーキが。奥は天井の高いゆったりした喫茶室で、道路側の緑豊かでストーブ完備の広いテラス席が人気。ペット可。メニューはドリンク各種と、ケーキセット、ホットケーキ、フォンダン・ショコラ、ホットスフレ、オムレツ(写真)、サンドイッチ、ボルシチなど充実。無料駐車場つき。青山らしい優雅なカフェタイムが過ごせると、いつも行列だ。TEL:03-3403-1818
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【夏のSWEETS】
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茗荷谷の「cafe竹早72」の「葛切り」
茗荷谷駅4分の、席数10の小さな和カフェ。店名は同地の旧番地名「竹早」に、「72」は「七十二候」に因んで。同店の甘味に用いる餡は、全て「一幸庵」製。メニューは、白玉ぜんざい、おしるこ、葛切り、季節の和菓子(一幸庵製)と煎茶/抹茶など、定番の甘味がそろっている。夏はやっぱり「「葛切り」がおすすめ。TEL:080-2247-4567
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【BOOKS】
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『わたしに会いたい』 西加奈子著 集英社
初のノンフィクション『くもをさがす』が話題になった著者が、「わたし」の体と生きづらさを見つめた短編小説集。2019年より、自身の乳がん発覚から治療を行った22年にかけて発表された7編と書き下ろし1編を含む、全8編を収録。乳がんを扱った作品もあるが、ノンフィクションのほうが興味をひかれた。2023年11月10日刊 1400円
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『思い出の屑籠』 佐藤愛子著 中央公論新社
前書きに「この11月で満百歳になる」とあるのでまず驚く。著者が生まれてから小学校まで、両親、姉、時折姿を現す4人の異母兄、乳母、お手伝い、書生や居候、という大家族に囲まれていた時代が、思い出すままに綴られている。幼い「アイちゃん」目線の、“人生でもっとも幸福だった時代”の暮らしぶりが伝わる。2023年11月10日刊 1300円
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『方舟を燃やす』 角田光代著 新潮社
口さけ女はいなかった。恐怖の大王は来なかった。噂はぜんぶデマだったけれど、サリンが撒かれ、地震や津波などの大災害が町を破壊し、世界的に疫病コロナがまん延する。今も戦争が起き続けている。信じられないことが、次々起きる時代。縁もゆかりもなかった飛馬と不三子、二人の昭和、平成を描く注目の傑作長篇。 2024年2月25日刊 1800円
【春のARTS】
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東京都美術館の「印象派 モネからアメリカへ」展
印象派がヨーロッパやアメリカへもたらした影響をたどる展覧会。19世紀後半、パリで印象派に触れ、学んだ画家たちは、新しい絵画の表現手法を自国へ持ち帰る。本展は、その印象派の革新性と広がり、アメリカ各地で展開した印象派に注目。アメリカ・ボストン近郊のウスター美術館は、このたび、初来日となる同館の印象派コレクションを中心に、モネ、ルノワールなどフランスの印象派、ドイツや北欧の作家らの作品を一堂に会する。知られざるアメリカ印象派の魅力に触れられる貴重な機会と言える。4月7日まで。
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国立新美術館の「マティス」展
アンリ・マティス(1869-1954)が後半生の大半を過ごしたニース市のマティス美術館の所蔵作品を中心に、切り紙絵に焦点を当てながら、絵画、版画、テキスタイルの作品を紹介するもの。切り紙絵の大作「花と果実」(写真右下)は、本展のためにフランスでの修復を経て日本初公開された作品。加えて私のお目当ては、マティスが最晩年にその建設に取り組んだヴァンスのロザリオ礼拝堂(写真右上)。上野の「マティス展」では映像でしか見られなかったが、今回は建築から室内装飾まで、礼拝堂を体感できる空間が再現。5月27日まで。
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【春のCAFÉ】
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「青山フラワーマーケットGREENHOUSE」
表参道駅から徒歩4分、骨董通りを一本入った青山フラワーマーケットが運営する「花農家の温室」をコンセプトとしたカフェ。インテリアは、花が生まれ育つ“温室”をイメージしてコーディネート。メニューは、ここならではの花をメインにフレンチトーストや、スイーツ、こだわりのハーブティー、ブレンドティーなど、見た目にも楽しいランチやお茶が味わえる。青山の真ん中にありながら、都会の喧騒から離れてホッと一息つける空間だ。帰りには、季節の花々や希少な品種のバラなどのショッピングも。TEL:03-3400-0887
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【春のSWEETS】
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銀座「あけぼの」の「さくらもち」と「草もち」
和菓子は季節を先取りするから、この頃注目。銀座「あけぼの」は、銀座で生まれ育ったお菓子屋さん。季節ごとに売り出されるお菓子には目が離せません。包装紙もおしゃれで、桜餅には「塩漬けした小田原産の八重桜が、上品な甘さの餡を引き立てます」と。北海道産小豆から作られた漉し餡が、袱紗包みに。草餅にはきなこが添えられて。各270円。
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【CINÉMA】
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役所広司の「パーフェクトデイズ」
第76回カンヌ国際映画祭で最優秀男優賞を受賞した役所広司が主演する人間ドラマ。監督はドイツの名匠ヴィム・ヴェンダース。東京・渋⾕でトイレ清掃員として働く平⼭(役所広司)は、淡々とした毎日を⽣きていた。同じ時間に起き、植物に水をやり、仕事が終わると銭湯や、食堂へ。古いカセットの音楽を聴き、古本の文庫を読むことと、フィルムカメラで木々を撮影するのが趣味。そんな男に、いくつかの小さな出来事が起きるが、平山の日々は変わるのか。端役のように、麻生祐未、石川さゆり、田中泯、三浦友和らが顔を出すのも見逃せない。久し振りに手応えある映画を観た。2023年12月22日公開。
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【BOOKS】
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『黄色い家』 川上未映子著 中央公論新社
十七歳の夏、親元を出て「黄色い家」に集った少女たちは、生きていくためにカード犯罪の出し子に手を染める。中年の女性を中心に危ういバランスで成り立っていた共同生活は、あるきっかけで瓦解し……。著者が初めて挑む、コロナ下のエンドレスなクライム・サスペンス。『読売新聞』連載を書籍化。2023年2月25日刊 1900円
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『ヒロイン』 桜木紫乃著 毎日新聞出版
著者が初めてテロ事件に取り組んだ意欲作。1995年3月。渋谷駅で毒ガス散布事件が発生。実行犯として指名手配されたのは宗教団体「光の心教団」の幹部男性と、何も知らずに同行させられた23歳の信者岡本啓美(おかもとひろみ)。この日から、無実の啓美の17年の逃亡劇が始まった。彼女が見つけた本当の“罪”とは。2023年9月20日刊 2000円
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「七十二候を楽しむ野草図鑑」 大海淳著 青春出版社
日本には、「二十四節気」とともに、「七十二候」という自然の移り変わりを細やかに表現した暦がある。この「七十二候」と、有用植物とを噛み合わせた本。野遊び作家である著者が、旧暦の七十二候にちなんだ野草の楽しみ方を、文とカラーイラストで紹介。巻末には「七十二候の野草を楽しむ基礎知識」も掲載。2024年1月25日刊 1800円
【如月の二十四節気】
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立春 2月4日(2024年)
春の始まり。前日の節分に豆をまくのは、春を迎える前に邪気を払うという意味。写真は、井の頭公園の金縷梅(まんさく)。春一番にまず咲くから。
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雨水 2月19日(2024年)
雪ではなく雨が降るようになる頃。雪や氷も解け、土も柔らかく潤い、草木が目を出し始める。写真は、大谷戸さくら緑地のオオイヌノフグリ、一面に広がる。
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【2月のCAFÉ】
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都会的かつ居心地のいい「アーティゾン美術館カフェ」
アーティゾン美術館に併設されたカフェ。大きなガラス窓に囲まれた2層吹き抜けの空間で、街に開かれた印象。店内にはテーブル席、カウンター席、ソファ席がある。カフェでは、気軽に楽しめるランチセットが主だが、ジャンルを超えたオリジナルの料理やスイーツも楽しめる。美術館に入らなくてもカフェだけの利用もOK。TEL:090-5390-9946
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【2月の
RESTAURANT】
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つくばの「森のキッチン ととや」
つくば市の郊外にある小さなレストラン。木々に囲まれたログハウスで、旬の地元食材をふんだんに使用したプレートランチやパスタランチが人気。緑の季節はテラス席が気持いい。紅葉の頃には、テラスに落ち葉が降りつもって。冬は店内に暖炉が焚かれる。雪が降り積もる冬の雰囲気も格別だ。TEL:029-828-7375
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[2月のCINÉMA]
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ヘルシンキが舞台の「枯れ葉」
孤独な男女がかけがえのない愛を見つけようとする姿が描かれている。厳しい生活の中でも生きる喜びと誇りを失わずにいる労働者たちの日常に迫る。BGMにウクライナ戦争のニュースが流れるが、ラブストーリーにはなぜか昭和の匂いがする。監督は5年ぶりのアキ・カウリスマキ。第76回カンヌ国際映画祭で審査員賞受賞。2023年12月15日公開。
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[2月のBOOKS]
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『恋ははかない、あるいは、プールの底のステーキ』 川上弘美著 講談社
「60代や70代の楽しさを書いた小説を書きたかった」という川上さんの言葉に飛びついた。小説家のわたし、離婚と手術を経たアン、そして作詞家のカズ。カリフォルニアで子ども時代を過ごした3人は、半世紀ほどの後、東京で再会。それぞれの人生が、あらたに交わり、移ろっていく。じわり心に届く大人の愛の物語。2023年8月22日刊 1700円
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『ママナラナイ』 井上荒野著 祥伝社文庫
「ママナラナイわね、お互いに」斉藤尚弥は不動産会社に勤務する36歳。近頃、何もかもうまくいかない、夫婦関係も仕事も絶不調。この表題作をはじめ、老いも若きも男も女も、この世に生を享け、大人になり、やがて老いるまで―心と体は刻々と変化してゆく。その日常を描いた10の物語。どの短編も幕切れがすごい! 2023年10月12日刊 760円
【睦月の二十四節気】
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小寒 1月6日(2024年)
寒さが極まるやや手前の頃。寒中見舞いはこの日から、2月4日の立春の前日までの「寒の内」に。写真は、日暮里・本行寺の千両。
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大寒 1月20日(2024年)
暦のうえでも、1年で最も寒い頃。そろそろ探梅のシーズン。写真は小石川後楽園の早咲きの紅梅「大盃」。同じく白梅「光圀」も咲き始める。
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【1月のNEWS】
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「小石川後楽園」の灯りと笑いの福招き
今年から、夜間特別開園される。「内庭ライトアップ」は、松と唐門が光で映し出される。「築地塀ライトアップ」は、様々な模様の影絵や、プロジェクションマッピングが白壁を彩る。「蓬莱島ライトアップ」は、夜の大泉水に、蓬莱島が浮かび上がる。期間中、狂言や里神楽などの伝統芸能公演も。1月12日~21日。18:00~21:00。TEL:03-3811-3015
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北東北の暮らしが生んだ「みちのくいとしい仏たち」展
青森、岩手、秋田の個性派ぞろいの約130点の木像を展示。地方の村々では小さなお堂や祠などを拠り所として、素朴でユニークな仏像・神像が祀られていた。大工や木地師の手による民間仏の彫の拙さは、厳しい風土を生きる人々の心情を映した祈りの形そのもの。観るだけで癒される。古いレンガ壁の東京ステーションギャラリーで、2月12日まで。
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【1月の
RESTAURANT】
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青山の地中海料理「GENTLE-Dining」(ジェントルーダイニング)
表参道駅から徒歩7分、大人の隠れ家のような緑に囲まれたプライベートダイニング。ガーデンテラスを抜けた先に広がる店内は、モダンな感じで天井も高く開放感が。イタリアンやスパニッシュを織り交ぜた目にも愉しい地中海料理や、専属のパティシエによる特製のケーキやスイーツが味わえる。BIは寿司 バーに。TEL:03-6897-3777
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【1月のCAFÉ】
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お正月に行きたい「虎屋菓寮 東京ミッドタウン店」
六本木のミッドタウンB1の「とらや」に併設した喫茶。京都を発祥の地として5世紀にわたって、菓子屋を営んできた「とらや」。ここでは、その極上のお菓子や、あんみつ、葛切、季節の甘味ほか、だしかけご飯/だしかけ麺も味わえる。これは、きび入りご飯または、稲庭うどんの上に、色とりどりの野菜をのせ、だしを添えたもの。TEL:03-5413-3541
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[1月のBOOKS]
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『はーばーらいと』 吉本ばなな 著 晶文社
小学生時代からの同級生、ひばりとつばさ。中学の卒業式の時以来、ひばりは姿を消した。両親と共にあるカルト集団に入会したのだ。19歳の時、宗教二世となったひばりから手紙が来て、つばさは脱会の手助けをする。著者が今関心を抱く、信仰と自由、初恋と友情、訣別と回復を描いた注目の書き下ろし小説。興味深い。2023年6月25日刊 1500円
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『ばにらさま』 山本文緒著 文春文庫
2021年10月に死去した著者最後の小説集。僕の初めての恋人は、バニラアイスみたいに白くて冷たい「ばにらさま」、余命短い祖母が語る、ポーランド人の青年をめぐる若き日の恋、「バヨリン心中」など、魅力満載の6編を収録。日常の風景の中で、光と闇を鮮やかに感じさせる凄み、構成など、まだまだ読みたかった。2023年10月11日刊 640円