一日を紅葉且つ散る長屋門 秋袷たたむや奥の六畳間 芋坂に羽二重団子食うて暮 藁囲ひ押しのけ咲くや冬牡丹 春光の満ちてヴァンスの大聖堂 利休忌や抹茶茶碗でダージリン 青梅を選りて一日の暮れにけり 白日傘傾げお墓の話など ひととほりお品書き見て「冷奴」 糸瓜忌の古書店街を往き戻り この俳句が生まれたとき ▼我が家の向かいに古い長屋門がある。その昔、明治天皇が鷹狩りに見え、休憩なさった折に建てた記念の御門だ。中の茶室は残っているが、今は駐車場だ。門前には染井吉野の古木が立っていて、春には今でも花をつけ、夏には葉桜となり、秋には葉を散らす。家に居ながらにして句材には事欠かない。