白きまま棺に入れし新日記 寒紅や誰にも会はぬ朝なれど 茶碗蒸し芹も土筆も摘みたてで 春月に打ち明けてみる老いの恋 蚊遣火や青空寄席の席ごとに 別荘に着けば蠅取リボン下げ 靴脱ぎに豚の蚊遣の置かれあり 邯鄲や岩崎邸の電話古り 文机に木通をいけて書きかけで 隣席は秋の袷や能楽堂