献杯の声の湿りて春の宵 春障子開けても雨の音もなく 暮れかねて仕舞ひ忘れし庭箒 永き日の縫ひ目こまかき台布巾 姫女菀晶子の庭に好き勝手 新聞に訃報小さく夕端居 新米に添へある手紙湿りをり 出来秋や出刃も菜切りも研ぎそろへ 掃き寄せし桜落葉にはづれ籤 老庭師ぽんぽん柚子を投げくれし