たった二時間の断水で、あたふた
都立青山高校昭和三十八年卒同期会文集より
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立秋を過ぎてもまだ暑い日のことだった。午前中は美容院に行き、帰りにスーパーで買い物をして、汗だくで帰宅。とにかくシャワーを浴びてから昼食をと、バスルームの蛇口をひねったら、一滴もお湯が出ない! 「屋上の貯水槽清掃のため、14時から16時まで断水」という、管理会社からのお知らせをうっかり忘れていたのだ。 思えば四年前、マンションの給水管更新工事のため、丸一日断水という日があった。その時は、前日から水を浴槽に貯めおいたり、水場ごとに飲み水と生活用水のペットボトルを用意して乗り切った。震災体験の予行演習とも考えた。 だから今回は買い置きのミネラルウオーターで食事の支度をし、洗い物はかねて準備の生活用水でと思っていたら、まもなく蛇口からきれいな水がごぼごぼと出てきて事なきをえた。万一の備えが、役立ったのだ。 たった2時間の断水だって、こんなにあたふたするのだ。今までは、他人ごとだった被災地の苦労が、現実問題として実感できた。早速、わずかだが義援金を送った。この夏の自然災害のニュースに心は痛んだが、自分では何も行動を起こさなかったことが恥ずかしい。 がんをはじめ、病死は避けられないだろうが、災害は対策をたてることである程度防げる。私たちが生きているうちに、そんな災害が起こらないのが一番とは思うが、今からでも遅くない。できる限りの対策をたてて、災害に備えたいと思った。 そして毎回、元気で同期会にも出席したい。さらに理想をいえば、瓦礫の中でなく、自宅か、病院のベッドで、安らかに最後の日を迎えることができたらと、願っている。百歳時代と言われているが、もう私たちは「健康寿命」の年を過ぎているのだから。