カット売りのりんご
2018年5月17日 朝日新聞「ひととき」掲載
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コンビニで、デザートの棚を見ていたら、皮をむかれカットされたりんごが目についた。1パック148円。一個買いより少し高い。店員に「どういう人が買うの?」と訊いたら、「若い人も、お年寄りも」と、こともなげに答える。 スイカやメロン、パイナップルなどのカットフルーツを売っているのは知っていたが、りんごまでとは気付かなかった。りんごは、当然自分で皮をむき、食べきれないときは、茶色くならないよう塩水につけ、冷蔵庫に保存するものと思っていたから。 りんごは風邪をひいたり、疲れたりしているとき、急に食べたくなる。子供の頃、病気をすると、いつも母親がりんごをすりおろしてくれた。その甘酸っぱい味が、記憶に残っているせいかもしれない。 私は、りんごの皮をむく一手間を惜しめば、自分の料理の決め事がどんどん崩れていくような気がする。すぐに出来合いの総菜も、サラダも買いたくなるに違いない。 料理をするときの手先の細かい作業は、ボケ防止にも役立つと聞く。私は、自分が料理が出来なくなるまで、カットされたりんごは買わないと、改めて決心した。