観たことありますか? NHK「のど自慢」
2023年6月05日 [ No.124 ]
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日曜日、お昼の0時15分からの生番組、NHK「のど自慢」。私は外出しない日曜日には、昔からいつも楽しみに観ていた。NHKの紅白歌合戦はじめ、プロの歌手が登場する歌番組は、番組数も減ったし、ほとんど観なくなった。素人が喉を競うこの番組だけは、家に居る限りずっとチャンネルを合わせていた。なんともほのぼのとした番組で、日曜日のランチタイムにはぴったりだと言える。 予選を通過した全国の老若男女の素人のど自慢が、次々登場する。歌は新しいものもあるが、耳慣れたジャパンポップス、歌謡曲などが中心。歌はうまい人ばかりでなく、家族や友人を勇気づけたいとか、誰かにメッセージを届けたいという様々な思いを抱いた人々が登場する。この頃はカラオケが一般的になっているから、人前で歌うことにものおじしない。衣装も、Tシャツにデニムという人もいるが、それぞれ地方色溢れたものや、仕事の制服など工夫を凝らしている人が多い。コロナ前は鐘を鳴らすと、司会のアナウンサーに抱きついたり、ゲストの歌手に握手を求めたり、壇上で大喜びするさまも楽しめた。 この番組は、1946年に始まったラジオ番組「のど自慢素人音楽会」から数えれば、七十五年以上の歴史をもつ長寿番組だ。震災やコロナ禍で公開生放送を一時中止することはあっても、その時代にあった放送スタイルで歌のエネルギーを各地から全国へ伝え続けている。 司会も高橋圭三にはじまって、宮田輝、徳田章、金子辰雄など、歴代錚々たるメンバーが顔をそろえている。この十年は小田切千アナウンサーが、毎回それこそ力いっぱい司会を務め、その姿に私まで引き入れられた。 だが、この四月の番組編成で「のど自慢」もすっかりリニューアルされた。まずこの小田切千アナウンサーと、二十一年間鐘を鳴らした秋山気清さんが卒業。司会は新たに二人体制となり、廣瀬智美アナウンサーと、二宮直輝アナウンサーが交代で務める。女性が司会を務めるのは初めてだ。鐘は、各地のオーケストラの打楽器奏者が鳴らす。 また出場者の歌唱を支えてきた生演奏のバンドが舞台から消え、カラオケ音源に変わった。NHKは「ますます多様化する音楽ジャンルに対応し、応募する方がチャレンジしやすくなる」と説明しているという。出場者は時にはリズムがずれてしまうこともあり、そんなときはバンドがやさしく合わせてくれるのも、この番組の見どころのひとつだった。カラオケではそんなこともなくなるから、その点は残念だ。 一方、コロナ禍では客席で待機していた出場者もステージに戻って来た。ゲスト歌手といっしょに、ステージに緊張気味に並ぶ出場者を見ながら、そうか、コロナも治まって来たのだと、改めて認識した。 観ている方がほとんどいないと思うので、一新された「のど自慢」を一部紹介すると、この日は、埼玉県羽生市からの放送。司会は若くて明るい廣瀬智美アナウンサー。ブルーのブラウスに白いプリーツスカート、ヒール姿できびきびと番組を進めていた。ゲストは布施明と長山洋子。鐘はNHK交響楽団の若い女性。一番に歌ったのは地元の高校三年生。「恋人ごっこ」を熱唱して、まず鐘を三つ鳴らした。続けて十八組が喉を競った。 出場者が歌い終わると、ゲストの長山洋子が「今さらねぇ」、布施明が「ついて来るなら」を歌う。その後、「心踊る」を歌ったカップルが特別賞を受け、「海ぶし」を歌った年配の女性がこの日のチャンピオンとなり、拍手の中で番組は終わった。 今までの「のど自慢」は安心して観られたが、新体制の「のど自慢」もそれなりにフレッシュで楽しく観られた。観ていくうちに、目にも耳にもなじんで、楽しめる番組になっていくだろう。「のど自慢」という長寿番組を終わらせず、こうした形でも続けていくのは、多くの年配の視聴者には喜ばれるだろうと思う。 日曜日は、朝6時35分からのEテレの「NHK俳句」も、俳句を学ぶようになってからは必ず観ている。朝早いから録画して観ているが、初心者の頃から今まで、いつも勉強になる番組だった。この「NHK俳句」も、4月から模様替えになった。より初心者寄りになったと言えるが、これに関しては前のほうが落ち着いて観られたような気がする。 NHKに限らず、民放の番組も、時々リニューアルされる。良くなったと言えるケースもあるが、改悪というケースも少なくない。局側は視聴率にピリピリして、右往左往しているのだろう。ドラマだって例外はあるが、ほとんど三カ月ごとに変わっていく。私達も、自分の気に入った番組には、何らかの形で一票を投じたほうがいいのかもしれない。