ついに白内障手術に挑戦!
2020年07月05日
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私は、小さいころから、近眼だった。高校時代から、近眼の眼鏡をかけ始める。周囲は美容上、コンタクトの人が多かったが、私は異物感があってなじめなかった。五十代になって、遠近両用眼鏡に替えたが、すんなり移行できて、問題はなかった。 だが最近、老眼が進んで、眼鏡をかけても新聞や本が読みにくくなってきた。パソコンも、スマホも、テレビやエアコンのモニターの操作にも、苦労するようになってきた。眼鏡店へ行ったら、「これ以上、眼鏡で矯正するのは無理。眼科で相談してみてください」と言われた。 思い切って、白内障手術では定評のある御茶ノ水の井上眼科を訪ねた。毎年一回、視野検査にも行っている病院だ。眼科医は、「白内障は、眼内にある水晶体が濁ってくる病気で、日常生活が不自由になると手術します。手術の時期は視力だけで決めるものではなく、水晶体の濁りの程度、不自由の程度や、白内障以外の目の状態など総合的に判断します。そんなに進行はしていないので、もうしばらく様子を見てみましょう」と言う。そうこうするうちに、コロナで家にいる時間が長くなって、目を使う機会が増え、いよいよ見づらくなった。同年代の友人、知人には、すでに手術を済ませている人が少なくない。皆口をそろえて、簡単な手術だ、日帰りでもできるし、翌日からは裸眼で暮らせるなどと、気楽な体験談を語る。「それなら私も」という気になった。 コロナの緊急事態宣言中だったが、これは不要不急だからと、再度、相談に行った。「今患者数が少なくなっているので、早めに手術日がとれます、希望するなら、視力が落ちている右目をまず手術してみましょう。多焦点のレンズもありますが、眼鏡と併用するなら、保険のきく単焦点レンズで十分です」ということになった。 手術は、濁った水晶体を包んでいる袋を一部残して、水晶体の中身を超音波の力で破壊しながら吸引除去し、眼内レンズを挿入するというもの。手術時間は、20~40分で済むという。依頼することにしたら、即、心電図や眼内レンズ度数などを決めるための手術前検査が行われた。手術日は、通常なら半年以上先になるところ、今回は約2週間後に決まった。日帰りでもできるとのことだったが、往復の危険や手間を考えて、一泊の入院手術を選んだ。 6月3日、午前中に入院、手術。右目に部分麻酔が点眼され、椅子が床と平行に倒され、右目以外は顔にカバーがかけられて、手術が始まった。そして光が交錯するうちに、ほとんど痛みもなく、20~30分で手術は終了した。胃や腸の内視鏡検査などと比べても、楽だった。術後は、右目に眼帯を固定され、自分で歩いて病室へ戻る。昼食、おやつ、夕食、9時消灯。麻酔はもう切れているはずだが、鈍い痛みや異物感はあったものの、眼帯のまま、デイルームへテレビニュースを見に行く余裕もあった。夜は、疲れてぐっすり眠れた。 6月4日、朝は6時に起床。看護師が眼帯をはずしてくれたが、まだ手術した右目はぼーっとしていて、よく見えない。「このままだったら、どうしよう」と、初めて不安になった。朝食後、視力検査、そして医師による診察。「順調です。退院していいですよ」と言う。会計は、後期高齢者で1割負担だから、2万1360円! 10時には病院の玄関を出た。 電車に乗ってうちへ戻っても、右目はまだぼーっとしている。ゴミが入ったような、睫毛が転んだような異物感がある。涙がたまる。瞼が腫れ、目が充血している。軽い頭痛もする。朝、昼、夜、寝る前と、1日4回も、3種類の点眼をしなければならない。その上、顔も洗えない。「これは、手術より、術後のほうがはるかにたいへんだ」と、痛感した。 6月6日。一回目の通院。また視力検査と、医師による診察。「順調です。心配はありません」と。少しほっとして帰宅した。翌日から、やっと顔が洗えた。洗髪もできた。ゆっくり入浴もして、さっぱりした。そうしたら、右目がだんだん見えるようになってきた。裸眼でも、なんとかパソコンが打てる、スマホが操作できる、新聞が読める、ベッドで本が読める。ただ、あまりにクリア過ぎるので、ずっと使っていた中近の眼鏡を併用したら、見え方がほどほどで調子がいい。やっと、胸をなでおろした。 6月12日。約一週間後の診察。医師は、「経過は順調です。今ある異物感や涙、充血も、だんだん解消します。次回は、二週間後に来てください」とのこと。安心した。 6月26日。術後3週間目の診察。裸眼視力は安定してきて、いくつかの右目のトラブルもほぼ解消した。次の診察は、一ケ月後。「そのとき眼鏡検査をして、新しい目に合う眼鏡に作り替えるといいでしょう」とのことだった。 手術前から、役にたったのは、一年前に同じ白内障手術をして、順調に回復したIさんのアドバイスだ。「最初は、視界がかすむ」、「2~3日すればよくなってくる」、「点眼は大事だから、忘れないように」、「顔は濡れティシュで拭けばいい」、「せっかく手術したのだから、近くは裸眼に慣れたほうがいい」などなど。私も記者時代、何ごとにつけ体験談を取材して記事をまとめたが、医者の一般論より、彼の話は具体的で胸に響いた。改めてIさんにお礼を言いたい。 7月からは、スポーツジムや、プール、アイメイクなどもやっと解禁になった。6月3日からの1ヶ月は短くはなかったが、「手術」をしたのだから、当然と言えるだろう。私にとって、眼は命同様だから、術後、順調に回復して何よりだったと思った。 この「日々」も、パソコンに向かって裸眼で書いている。今は生まれ変わった目で、さあもう一仕事と思っている。