俳優アラン・ドロンが「名誉パルムドール賞」 受賞
2019年07月05日
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第72回カンヌ国際映画祭で、フランスの俳優アラン・ドロン(83歳)が、5月19日、映画史への長年の貢献をたたえる「名誉パルムドール賞」を受賞した。この「名誉パルムドール賞」は過去に、俳優では故ジャンヌ・モローやカトリーヌ・ドヌーブらに授与されている。 ドロンは、授賞式で娘の女優アヌーシュカからトロフィーを受け取り、満場の拍手に涙を流した。「スターになれたのは皆さん観客のおかげだ。デビューした頃に『難しいのは続けていくこと』だと言われた。しかし62年間続けて来られた。むしろ難しいのは去ることだ。今日は私のキャリアの最後」とスピーチし「女性の前でこんなふうに泣いたことはない」と漏らしたそうだ。 ドロンの受賞に際して、米国などの女性活動家らから、女性を蔑視する人物として抗議が殺到したそうだが、これに対しドロンは、「女性をたたいたことはあるが、女性にビンタを食らった方が多い。女性に付きまとったことは人生で一度もない」などと語ったという。ドロンを巡っては、黒い噂も耳にするが、スクリーンのドロンだけに恋している私は、無視することにした。 1957年に「女が事件にからむ時」で映画デビューしたドロンは「太陽がいっぱい」(60年)や、「太陽はひとりぼっち」(62年)、「地下室のメロディー」(63年)、「山猫」(63年)、「サムライ」(67年)などに出演。60~70年代にかけ、フランスのトップ俳優として活躍。欧州のみならず、日本でも絶大な人気を博した。当時、私は、すっかりドロンに魅せられ、彼の映画ばかり見ていた。この中では「太陽がいっぱい」と「サムライ」が今でも忘れられない。 映画は見ていなくても、74年に放映されたレナウン「ダーバン」のCMを覚えている人は少なくないのではないか。「D'URBAN C'EST L'ELEGANCE DE L'HOMME MODERNE 現代に生きる男のエレガンス」というCMだ。ドロンなくしては成立しなかったCMといえよう。 私は、2016年のこの「日々」のページで、「永遠の恋人、アラン・ドロンの映画祭」というタイトルで、一文を綴った。 第28回東京国際映画祭提携企画として、アラン・ドロン特集が組まれたからだ。生誕八十年を記念しての映画祭だった。当時もドロンは映画界を引退していたので、再び私たちの前に姿を見せることはないと思っていた。 だが2018年、NHK BSプレミアムで、「アラン・ドロン ラストメッセージ」という1時間番組が放映された。ドロンは、確かに老いてはいた。実質的な妻、ミレイユ・ダルクを亡くして間もなくの頃だったが、堂々とインタビューに答え、自らの人生を語っていた。今は、フランスとスイスに別荘を持ち、犬たちと暮らしているという。別荘にはチャペルと35匹の犬の墓を建て、自分もそこに眠るつもりだそうだ。 そこに降ってわいたような「名誉パルムドール賞」受賞。再び束の間の脚光を浴びて、どんなにドロンが感動したかは、想像がつく。 ドロンは「ラストメッセージ」のなかで、来年の東京オリンピックには来日し、フランス人の柔道家を応援すると言っていた。実現するかどうかはわからないし、お互い?元気かどうかもわからない。でも期待しないで待ってみることにしよう。きっと小さなニュースにはなるだろうから。