レンジフード取り換え工事に1ヵ月!
2019年03月05日
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1月10日。天気予報が、「この冬一番の寒さになるでしょう」と、報じていた。私は正月明けから風邪をひいて、体調が悪かったが、その日は9時からレンジフードの取り換え工事が入る予定だった。なんとか起きて台所を片付け、職人さんは早めだからと、8時半くらいからスタンバイしていた。 だが9時になっても、9時半になっても誰も来ない。電話も入らない。私はしびれを切らして、工事の営業担当に電話を入れたら、「確認してみます」と事務的な応答。三十五分すぎてレンジフード工事の人が一人でやって来た。古いレンジフードを取り外し、間口の広い新型を取り付け、それに伴って壁際の吊戸棚を撤去。フードの使い方の説明をする。だがフードと壁の隙間はそのまま、後でタイル職人が来るという。時間は聞いていないともいう。 また担当に、タイル職人の来る時間を問い合わせると、昼過ぎ、三時ころ、五時過ぎにと、時間が延びる。来たのは、暗くなった五時半。ところが貼り始めたタイルを見たら、うちのタイルと色が違う。「ピンクとだけ聞いていたので。はがしましょうか」と職人自身もいう。即、はがしてもらった。タイル以外の壁とフードとの隙間については何も聞いていないと、写真を撮っていった。 今回の工事は、入居以来30年近く使用していたレンジフードを、新型の掃除しやすいものに取り換えるというもの。だからガス会社直系の、地元のガス機器修理やリフォーム工事をする会社に依頼したのだ。簡単に済むと思った。 ところが、大誤算! 年末の多忙時期を外し、年始めの工事にしてもらったのに、前日も、その日になっても担当からは電話一本来ない。やっと工事の人が来て半日ですむと思ったのに、丸一日かかっても完了どころか、工事半ばというずさんさだった。 また担当に電話したら、「現場の写真を見ると、隙間を埋めるフィラーが必要だから、それをこれから発注する。追加工事は届いてから」という。「今からでも現場を見ますか?」と訊いたら、「写真があるから」と答える。私はびっくり。写真だけで、隙間のサイズが測れるのか? タイルの色合わせができるのか?「そんないい加減なことではお支払いはできません」と、私は切れた。 そこで初めて慌てた担当は、翌日、採寸に来た。いちおう詫びを言い、隙間の寸法を測り、「フィラーは特注だから2週間はかかる」と告げて、そそくさと帰っていった。だが、約束の2週間を過ぎても何の連絡もない。工事半ばの台所の真ん中で、私は怒り心頭に達した。咳もひどくなった。
定年になってから、ここを終の住処にと、二回、室内の大きなリフォーム工事をした。いずれもこのマンションの内装工事を請け負ったインテリア会社に依頼し、社長自ら作業着で、細かく気配りしてくれたおかげで満足の行く仕上がりになった。その後は寿命が来た便器や給湯器などの、やむを得ない設備機器の交換工事をしていた。すべてそれぞれの機器の専門業者に依頼したので、問題なくすんだ。 しかし、今回ばかりは勝手が違った。どうしようかと途方に暮れて、1月末日に会社に連絡すると、担当は外出中。言いつけるようなことはしたくなかったが、やむを得ず上司に電話を代わってもらった。 上司は、担当から、うちの工事の報告を部分的にしか受けていなかったらしい。私が順を追って経過を説明すると、とにかく担当に事情を聞いて対処するという。それからしばらくしての電話で、たちまち2月8日の工事日が決まり、当日は自分と職人がいっしょに行って、半日で工事を完了させるという。その工事の前に、まず私に直接、事情を聞きたい。迷惑をかけた謝罪もしたいということだった。 現れた上司は、30代半ばで、作業着姿だった。私は箇条書きしておいた経過を示し、いきさつを説明する。加えて、担当の今回の対応は、私ばかりではなく、職人にも迷惑をかけ、会社の信用にもかかわるといった。 上司は一切言い訳せず、申し訳なかったと率直に謝罪した。自分の管理不行き届きだったと、重ねて詫びた。私はもともと文句を言ったり、怒ったりするのは苦手だ。とにかく工事を予定通り速やかに完了してもらえばいいことだから、それで了解した。 1月10日の工事日から約1カ月後の2月8日、朝8時半に上司から「これから伺います」との電話が入った。約束通り9時に、上司と工事の人が来て、まず床と壁の養生をした。新しいレンジフードと壁の隙間にステンレスのフィラーを取り付け、その途中でタイル業者も来て、待機している。そしてすぐ、うちのタイルと同色のタイルを貼り、目地を埋めた。工事は2時間半で終了した。 上司は最後まで残ってフード周りの掃除までていねいにした。そして、改めて今回の不手際を詫び、半年後の点検の約束もして帰った。行き届いた対応だったので、私はようやく納得した。後日、事業部長からも謝罪の電話が入った。 これだけの工事に1ヵ月とは! 室内全体のリフォームより日数がかかったことになる。溜息が出た。今回のトラブルは、ひとえに入社3年という担当者の段取りの悪さ、気配りのなさ、何より仕事のいい加減さに起因したものだろう。 私の風邪が長引いたのも、工事現場のような台所で、一ヵ月もご飯を作ってきたせいかもしれないと思ってしまう。 新人時代、私も数々の失敗をしてきた。上司とともに謝罪に行ったこともある。同じ過ちは二度としないと反省し、その積み重ねを、今日までの糧としてきた。 担当者にも、たまたまうるさい客に当たったと忘れてしまうことなく、今回の経験をこれからの仕事にいかし、いい営業に育ってほしいと思うけれど、高望みかもしれない。