びっくり！「なりすまし詐欺」に遭いかけて

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　朝食後、掃除機をかけ始めたら、チリンとスマートフォンの着信音が鳴る。開いたら、「メッセンジャー」欄に赤いマークがついている。送信者名は、私が現役時代いっしょに仕事をしていた後輩のＡ君だ。「久し振りだわ」と文面を読む。
　文面は短く「今、忙しい？」とあったから、「掃除中。何かご用？」と返すと、「手伝ってほしいことがある」と書かれている。「どんなこと？」と、気安く返信すると、「近くにコンビニがあるかな？」と訊いてくる。「あるけど」と書いたら、「五万円分のＢｉｔＣａｓｈカードを二枚買ってきてほしいんだ」と、写真まで添付してきた。「今、急ぎで必要なんだ。買ったら裏のコードを写メして送ってほしい」とまで迫ってくる。
　私もＡ君も、フェイスブック「友達」でもあるから、たまにメッセージのやり取りをすることはある。だから、当初は本人からだと疑いもしなかった。でもお金の話が出たとたん、鈍い私も、さすがに相手はＡ君本人ではなく、Ａ君の「なりすまし」だと、気が付いた。
 「本当にＡ君なの？　直接電話で詳しく説明して」と私のスマホの番号を書いた。これが大失敗。「ごめん、電話は故障しているんだ」と、この手の定石通り、犯人はあくまで声を聞かせようとしない。「もう、いたずらはやめて！」と、私は怒りの返信をして、スマホを切った。

　これで、この騒ぎは終わらなかった。しばらくして友達から、「あなたの名前のＬＩＮＥがきたけれど、あなたからではなさそう。アカウントを乗っ取られているかもしれない。ご確認ください」というメッセージがきた。続いて、私のスマホや固定電話に、親しい友人、五人から直接電話が入ってきた。「あなたの名前で、へんなＬＩＮＥがきたの。コンビニでカードを買ってきてほしいって。あなた、そんなＬＩＮＥなんて送らなかったわよね」と。友達の電話番号をどう調べたのか、今度は犯人が、私のアカウントを乗っ取って、私に「なりすまし」、私の友達にＬＩＮＥでメッセージを送っているのだ。
　私はフェイスブックの「友達」は大勢いるが、ＬＩＮＥ友達はわずかだ。だから私の「なりすまし」メッセージは、始めフェイスブックの「友達」か、ＬＩＮＥ友達だけに送信されたのだと思ったが、違っていた。フェイスブックもＬＩＮＥもやっていない学生時代の友達や、趣味の友達まで広がっていた。私がスマホに登録している友人達の電話番号を乗っ取って、ランダムにＬＩＮＥを送ったらしい。大変なことになったと、私はもうパニック。幸い友達は一人もそんなバカな話にのらなかったから、今のところ被害はゼロだけれど。

　それから、私はその「なりすまし」されたＡ君に直接電話してみた。Ａ君は「そうなんだよ。乗っ取りに遭ったんだよ。僕の友達からも、僕からというメッセージの、問い合わせの電話がきた。とりあえずパスワードは変更した。よくある話だ。被害がなかったなら、気にしない方がいいよ」と、言ってくれた。
　早速私は、フェイスブック上に、その旨の警告コメントを載せた。すぐ福井の知人から、「あなたの名前のＬＩＮＥがきたけれど、無視したとの書き込みがあった。そんな遠いところまで、犯人は連絡していたのか。
　次に、地元警察の生活安全課に、届けた。警察は、「犯人のアドレスも電話番号もわからないうえ、具体的被害が出ていないから、手の打ちようがない。自分で友人達に知らせて、今後の被害を防いでください」ということだった。ストーカーでもなんでも、警察は、実際の被害に遭ってからでないと、犯人を捕まえてはくれないのだ。新聞にも投書したが、ボツだった。

　私は一人暮らし、子供も孫もいないから、「振り込め詐欺」になんて遭うはずがないと、たかをくくっていた。でも友達は少なくない。私でも、こんな「なりすまし詐欺」や、「アカウント乗っ取り詐欺」に遭うこともあるのだと、身に沁みた。
　とりあえず、フェイスブックのパスワードと、ＬＩＮＥアカウントを変更し、今後、前のアカウントでは、ＬＩＮＥのやり取りはできないよう、手を打った。私の不注意で、今回ご迷惑をかけた方々には、ここであらためて深くお詫び申し上げる。
　今のところ、その日以来、犯人からのメッセージは来ない。友人からの電話問い合わせもない。いちおうこの件は終息したとみていいだろう。
　ただ私の「なりすまし」や、今度はあなたの「なりすまし」メッセージが、どこかへ送られているかもしれない。「今、忙しい？　手伝って欲しいんだけど？」ときたら、ただちにスマホを切ってください。そして、本人に直接、電話で確かめてみてください。私の二の舞を演じないよう、皆様にはくれぐれも注意していただきたい。
　だからといって、私はホームページやフェイスブックやスマホをやめて、いままで積み上げてきたネットワークを縮小しようとは思わない。出来得る限り注意しながら、やっぱりもっと前へ進みたいと思っている。