写真俳句展「角川庭園の四季を詠む」に寄せて
2016年09月05日
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わが家は、狭いマンション。バルコニーも狭く、満足に植物も育てられない。だからここ二、三年、徒歩十五分の「角川庭園」を自分の家の庭がわりに、毎週のように通っている。 四季折々、私好みの花が咲き、樹木が茂っている。鳥も来る。庭の木株のベンチに腰掛けて、電線が邪魔しない空を見上げたり、葉を揺らす風の音を聞いていると、東京とは思えない。写真を撮ったり、時には下手な俳句を詠んだり、本を読んだり。今の私には、かけがえのないお庭になった。 「角川庭園」は、俳人で、角川書店の創設者である角川源義氏の旧邸宅を、杉並区が遺族から寄贈を受けて、改修したもの。二〇〇九年に、区立公園として開園された。私が荻窪のマンションに引っ越してきたのが一九九四年、定年退職したのが二〇〇四年だから、そのあとということになる。 建物は、一九五五年竣工の木造二階建て瓦葺近代数寄屋造で、源義氏の意を受けて、建築家の加倉井昭夫氏が設計したもの。二〇〇九年には国の登録有形文化財に登録されている。一階には、句会、講座などに貸し出されている詩歌室、茶室、展示室がある。二階には、源義氏が、俳誌の編集などに携わった座敷や、角川春樹氏、歴彦氏、辺見じゅん氏などが昔使った子供部屋もある(非公開)。 庭園は、建設時の源義氏の考え方が受け継がれ、俳句に相応しい野趣あふれる庭で、四〇〇本の樹木と、季節の花や草木を楽しむことができる。庭には、水琴窟、句碑、石仏、石畳の小径などもある。 荻窪の住宅街を、案内板などを頼りにいくつか曲がると、エントランスに植えられた大きな芭蕉の木が、目に付く。松尾芭蕉にちなんだ「角川庭園」のシンボルツリーだ。区報を見て最初に訪れたのは、オープン間もなくだった。かつて源義氏の応接間だった展示室には、句集や色紙などが並び、お庭に回ってみると、小鳥のさえずりが耳もとでし、どこか昔々のわが家の庭にも似ていて、いっぺんで気に入ってしまった。 花や木は、月が変わるごと、季節が移ろうごと、次々変わっていく。蕾は花になり、花が終わると、実をつける。その変化も興味深い。訪ねる度に、写真を撮った。庭園のスタッフの方々と親しくお話しするようにもなった。Yさん始め、どなたも親切に花や木のことを教えてくださる。泰山木の花や百日紅などの木の花、秋の七草など俳味あふれる草花や、加えて裏庭の箆面高(へらおもだか)とか、馬の鈴草とか、今までまったく知らなかった草木の名前をいくつも知った。 私がいつも写真を撮っている理由を訊かれ、自分のホームページに、俳句に添えて花や鳥の写真を、毎月アップしていることをお話したら、早速見てくださった。特に、お庭の蹲踞(つくばい)に、エナガが止まっている写真は、Iさんなどスタッフの方々が気に入ってくださって、「展示室で、写真俳句展をやりませんか」という、思ってもいないお話をいただいた。 俳句はまだまだだが、写真は、素人写真ながら、四季折々、二年以上撮っているので、展示する枚数はそろう。それで僭越ながら、そのご提案をお受けし、どうにか三〇枚がまとまった。 そして角川庭園の展示室で、スタッフの方々のご協力を得て、この九月一五日から、一〇月一一日まで、「角川庭園の四季を詠む」という私の写真俳句展が開催される運びとなった。機会があったら、お立ち寄りいただければと思っている。
角川庭園のホームページ(杉並区公式施設案内)はこちら