私の杉並図書館120%活用法
2016年08月05日
◎
杉並区立中央図書館というのが、正式名称。我が家から、徒歩五分のところにある。蔵書数は都内最大級。この荻窪のマンションに引っ越してきて、一番にマークしたスポットだ。でも、現役時代はなかなかその時間が作れず、ご無沙汰していた。 定年になって、いざいざということで、足を向けた。設計は建築家、黒川紀章。ガラス張りのシャープな建物で、地上二階建て、地下一階建て。でも館内へ足を一歩踏み入れたら、異臭が鼻をついた。周囲を見回すと、ビニールソファ―に、椅子に、ホームレスや、それに近い人々が席を占めていて、その辺から臭ってくるのだ。 リクエストした本も、なんとなく手あかにまみれ、黄ばんでいる。本と言えば、新しいインクの匂いのするものとしか、お付き合いがなかったので、「これはまいったな」と思った。出版社に勤めていたから、本は書店で買って読むものと思っていたし、一挙に図書館から気持ちが引いた。 それから数年、男性作家なら村上春樹に始まって、藤田宜永、海堂尊、東野圭吾、今野敏、堂場瞬一、池井戸潤、垣根亮介など、女性作家なら小池真理子、江國香織、小川洋子、井上荒野など、好きな作家が何人も見つかって、そうなるとデビュー作から、話題作まで、全部通して読みたくなった。古い作品は書店でも、古書店でもなかなか見つからない。 気を取り直して、再び図書館へ向かった。あら不思議、昔の異臭は消えていた。椅子に座る人も普通の中高年だ。初めて行ったときは冬だったから、暖房のせいもあったのかもしれない。古びた本は、それなりその本が多くの人に読まれたのだと納得できた。そうなると、本を借りては返し、また借りて、何人の作家の全作品を読み通したことか。また、貴重な角川源義全句集などもそうして読んだ。図書館ならではの読書法だろう。 書店で新刊書をパラパラめくって購入する楽しみは残しながらも、迷った本は、家のパソコンから図書館に予約し、準備が整うと、メールで知らせてもらう。読んでみて、手元に置きたい本や、何度でも読み返したい本だけ、書店で購入するようにした。そうしないと、わが家の狭い書棚はすぐ満杯になってしまう。そうまでしても、やっぱり本は増えてしまうが。 新刊雑誌や週刊誌も、だいたいは図書館で読む。開館時に行けば必ず手に入る。新刊以外のバックナンバーは貸し出しもしてくれる。家庭画報や園芸ガイド、週刊文春なども、そうして読みたいところだけ読んでいる。 この頃はさらに図書館とのお付き合いが深まって、借りた本をそのまま館内で読み切るという利用法も見つけた。家だと気が散るが、図書館なら、本を読む以外のことは出来ない。分厚い本でも静かな環境で読み通すことができるようになった。 十年前、図書館に隣接して、「読書の森公園」という公園ができた。樹々が茂り、季節の花が咲き、睡蓮が咲く池あり、四阿あり、ベンチあり。気候のいい時は、戸外のベンチで本を読むのも一興だ。遊具などなく、図書館同様、静かだ。 最近は、植物や鳥などにも関心があるので、いつもカメラ持参で図書館と公園へ通っている。わずかな道のりでも、住宅の庭に、生け垣に、マンションの植え込みに、四季折々の花と香りが楽しめる。遠くへ行かなくても、近所で十分にお花観ができるのだ。こうして、私の、図書館に通う楽しみは、尽きることがなくなってきている。