「捨てるばかりが能じゃない」と気が付いて
2015年02月01日
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寒い二月ともなると、やっと家の中の片付けにとりかかろうと、重い腰を上げる人も多いと思う。私はとにかくずっと前から狭いマンション住まいだったから、いつも「捨てる、捨てる」を実行していた。でもぎりぎりまで捨てると、困ることがあるということに、ある時、気が付いた。 というのは、十年以上も前のことだが、思いがけず、入院することになった。一カ月で退院するつもりだったから、当初の入院荷物は、少なかった。パジャマは病院でレンタルすればいい、下着は二、三組持参すればあとは洗濯すればいい、基礎化粧品は小瓶でいいと、旅行気分でたかをくくっていた。 それが、手術だけで一カ月、その後の抗がん剤治療に九カ月、合計十カ月もかかってしまったのだ。レンタルパジャマ代はかさむし、洗濯機の前は行列ができているし、化粧品はたちまちなくなった。入院が長引くにつれて、ホームウエア、食器、文房具など、必要なものがどんどん増えた。 まず家族にパジャマやホームウエアがわりのスポーツウエア、文房具など、私の自宅にあるものを持ってきてもらい、足りないものは病院の売店で購入。幸い売店にはほとんどのものがそろっていたが、実用オンリーで、好き嫌いは言っていられない。やむなく、間に合わせのもので、十カ月をすごすはめになった。 抗がん剤治療は、入院中、ときどき外泊や一時退院があった。私はいつも何か新しく買うと古いものは処分していたので、家には余分なものがない。パジャマや、ヘアドライヤー、スリッパ、ホチキスまで、慌てて病院用と、自宅用の二セットを買いそろえた。そうしないと、入退院のたびに大荷物になってしまう。 幸い病気は治り、退院できたが、それからは新しいものを買っても、古いものをどんどん処分しないように心がけている。入院用と決めたボストンバッグに、古くても必要と思われるものをそろえた。これからは緊急入院などもあるかもしれない。だからバッグに誰にでもわかるよう入院用とラベルを貼って、中身の一覧表も添え、クローゼットの中に常備している。 また、バッグは、古いボストンバッグは入院専用にしたが、国内旅行用、海外旅行用のキャリーバッグを、それぞれ別のクローゼットに収納している。国内旅行用は頻繁に使うが、その中には、化粧ポーチ、インナー用袋、アウター用袋、傘、予備の眼鏡、ミニ文房具セットなどを常備している。特に、化粧ポーチには、入院体験を踏まえて、長期になっても困らないよう、爪切り、シェーバー、体温計なども入れてある。海外旅行用には、化粧ポーチほかは国内用から流用するとして、スリッパ、アイマスク、飛行機用枕などを入れている。最近は旅行にも、パソコンを持参することが多いので、国内旅行でも、海外用の大きなバッグを使うことが多くなってきたが。こうして整備しておくと、旅行準備も速やかにできる。 そしてもう一つ、災害用リュックサックを、寝室に置いている。 こうして四つのバッグには、だぶるものも少なくないが、何もかも整理しすぎないように努めている。捨て過ぎず、余裕を持つということは、いつくるか予想がつかない地震などの災害の際、思いのほか役立つかもしれない。