新しい部屋で、“恋人たち”と暮らす
2014年06月01日
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念願のリフォームがすんで、新しい暮らしが始まった。気になっていた、リフォーム以外の部分のクリーニングや、椅子の張り替え、インテリア雑貨の買い替えは、続けてしてしまったので、ほぼ思い通りの部屋に落ち着いた。 ここで、恋人でも招待したいところだ。その昔の恋人は、アラン・ドロンだったが、その後は、近藤正臣、田村正和、豊川悦史、木村拓哉と続く。今の恋人は、綾野剛か。私は年とっても、恋人はどんどん若くなる。そしてスクリーンから、自由にこの部屋を訪れてくれるから、退屈しない。 でも、もっと私の心をとりこにしているのは、毎日いっしょに暮らす、家具やインテリア雑貨たちだ。昨年から、私の心を悩ませたのは、「イデー」の革のソファ。昔、キムタクが「ロングバケーション」で使っていたソファに似ている。ショップで腰かけてみると、包みこまれるような座り心地でうっとりとした。その割に値段は手頃だ。それからショップに何度も通ったが、なかなか決心がつかない。一昨年、高価なファブリックのソファを買ったばかりだったから、心変わりするには早すぎる。そんな時、姪が結婚することになった。私は思い切ってそれを結婚祝いにプレゼントすることにした。私は念願の革のソファに買い替えることができ、姪夫婦も新品同様の高級ソファーが手に入って、双方大満足だった。その革のソファは、新しい部屋にもとてもよく合った。 ダイニングテーブルとチェアは、もう二十年近く使っているものだ。古びてはいるが、これも昔、「イデー」で吟味して選び、高さも調節してもらったセミオーダーに近いものだったから、安売りショップの新品などに買い替える気はしない。傷みの目立つチェアの座面だけは張り替えたけれど、あとはせっせとお湯拭きしたら、見違えるようにきれいになった。 ほかに新しくしたのは、玄関マット。永年使っていたマットは無地で愛想のないもの。明るくなった床材とはミスマッチだ。そんなとき、「伊勢丹」で見つけた草木染の上品な「ロゴバキリム」に、すっかり魅せられた。玄関マットとしては安くない。他も見て回ったが、やっぱり忘れられず、思い切って購入。出かけるとき、帰ってきたとき、必ず踏むけれど、そのたびにうれしさが込み上げてくる。 それから高価だったけれど、昨年買い替えたものに、急須がある。外出のたびに横を通る「器物屋」という趣味の雑貨の店に展示されていたもの。「工房アイザワ」の手造り純銅シリーズで、朱の漆掛けでなんとも美しい。通るたびに、「売れていないといいな」と願い、お店の人とも親しくなって、ついに買ってしまった。湯飲みは、毎年行っている(でも泊まったことはない)箱根の「強羅花壇」のショップで買ったもの。内側の底に藍の渦巻き模様のある品のいい茶器で、今のところ、客用にしている。 昨年は、消費税値上げも見込んで、古くなったものは、ほかにもいくつか買い替えた。十年以上使っていた炊飯器、オーブントースター、電子レンジの三点セットは、デザインがシンプルで、価格もリーズナブルな「無印良品」のものに統一したらすっきりした。 というわけで、身近な家具や雑貨は、ほとんど恋焦がれて手に入れたものばかり。毎日いっしょに暮らすものだし、もしかして一生使うものだから、ちょっと贅沢しても許されるのではないだろうか。これからもまた新しい恋をするだろうが、急がず、楽しみながら選んでいこうと思っている。