音楽と小説とドラマと
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村上春樹の「色彩を持たない多埼つくると、彼の巡礼の年」を読了。彼の小説には必ずクラシック音楽が流れている。この小説には、リストの「巡礼の年」の『ル・マル・デュ・ペイ』が繰り返し流れていた。この曲を聴きながら作品を読むと、小説の趣が変わってくる。格調高くなり深みが増してくる。 小池真理子もよく音楽を使う。直木賞受賞作の「恋」には、バッハの「無伴奏チェロ組曲」が終始、もの悲しく流れていた。同時期のサスペンス「死に向かうアダージョ」には、アルビノーニの「アダージョ」(葬送曲)が謎解きのカギにもなっていた。最近、私はたいせつな人を亡くしたので、この曲を聴いていたら、たまらなくなって止めてしまった。 テレビドラマもしかり。古くは、「金曜日の妻たちⅢ」の「恋におちて」(小林明子)、「ニューヨーク恋物語』の「リバーサイドホテル」(井上陽水)、「東京ラブストーリー」の「ラブストーリーは突然に」(小田和正)、「高校教師」の「僕たちの失敗」(森田童子)、「あすなろ白書」の「TRUE LOVE」(藤井フミヤ)、「愛していると言ってくれ」の「LOVE LOVE LOVE」(ドリームズ・カム・トゥルー)、「ロングバケーション」の「LA LA LA LOVE SONG」(久保田利伸)などなど、枚挙にいとまがない。 なぜか最近のドラマには、こうしてドラマと主題歌が、切り離せない作品が少ない。山下達郎の歌う「GOOD LUCK!」の「RIDE ON TIME」や、「新参者」の「街物語」くらいしか思い出せない。ドラマが低調のせいもあるだろう。 だから自分が小説を書く時は、できるだけ音楽を流そうとは思っているのだが、浅学なので、喫茶店にはバロック音楽が流れていたとか、古いシャンソンが聞こえていたとか、とおりいっぺんになってしまう。