「看護エピソード」表彰式に参加して
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表彰式の日は雨だった。私は傘をさして、原宿の表参道ヒルズの向かいの日本看護協会へ向った。昔は確か、前に看護師さんの青銅の像が立っていたような記憶があったが、今は黒川紀章デザインの複合ビルの一角にあった。招待席に座る。表彰式では、一般部門の入選者として私の作品の題名と名前が読み上げられ、内館さんからは、優勝賞以外にも心に残った作品として、私の「湯たんぽ」が挙げられた。その作品は、「エッセイ」のページで公開してある。 三日後、表彰状と賞品の「ナースキティ」のぬいぐるみが送られてきた。それを、ヤマアジサイの花といっしょに窓辺に飾って、「ホーム」の写真でご紹介してみた。 五月十二日は、「看護の日」。ナイチンゲールの誕生日にちなんで、一九九〇年に制定されたそうだ。それに合わせて今年度は、第三回「忘れられない看護エピソード」を募集。たまたまネットでそれを知って、軽い気持ちで応募してみた。 なんと三四一九通もの応募があり、特別審査員の内館牧子さんほか、厚生労働省、日本看護協会関係者などの審査員による審査の結果、看護職部門十作品、一般部門十作品が選ばれた。残念ながら優秀賞は逃したが、私は一般部門の入選五作品に選ばれたのだ。 看護職部門では、ベテラン看護師さん、新米看護師さん、珍しい男性看護師さんなどが、一般部門では難病の子供を抱えたお母さん、交通事故で生死の間をさまよった女性などが、優秀賞を受賞した。辛かったろう、苦しかったろうと、涙を誘う作品ばかりだった。 入選の私だって、おなかのがんとの闘いは、辛かったし、苦しかった。それを親身に支えてくれたのが、看護師さんたちだった。「湯たんぽ」にはそのことをありのままに書いた。 でも私が何よりもうれしかったのは、がんから生還できたこと、こうして元気で表彰式に参加できたことである。